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2022.10.07 スイス本社R&D(研究開発)部門責任者のご紹介
皆さんもご承知の通り、ボール ウォッチでは毎年春に数多くの新商品を発表させていただいております。これら新商品は発表後、早いモデルでは数ヶ月後、遅いモデルになりますと1、2年が経過してからようやくローンチが開始されるというモデルもございます(お待たせしまして誠に申し訳ございません)。数年後の売上やブランドイメージの命運を握るこの新商品の開発という重責をスイス本社で担っているのが、R&D(研究開発) 部門及び技術部責任者である「フィ・ヴァン・トラン」です。今号では、彼をご紹介させていただきます。
1973年、戦時下の中ベトナムに生まれた彼はその後5歳の時に両親と共にスイス・ラ・ショー・ド・フォンに移住する。大学で光学(光ファイバーなど)やマイクロシステム(シリコン上のマイクロセンサーなど)におけるマイクロテクノロジーを専攻し、同時に時計モジュール製造についても学ぶ機会を得ました。卒業後、ムーブメント製造会社である「コンプリタイム」、コンプリケーションウォッチを手掛ける「グルーベル・フォルセイ」、そして2010年に自社開発・製造によるムーブメントを搭載して復活を果たした「ペキニエ」のR&D責任者に就任。この間に8つに及ぶ特許技術とブランド初の自社ムーブメント開発に貢献しました。ムーブメント開発にはゼロベースから着手し、開発はもちろん、生産・品質管理にわたり全ての工程を経験します。そして2015年、今後ボール ウォッチが時計製造において破壊的イノベーションを起こすために、技術改革に専念する研究・開発専門チーム「パトリック・ラボ」を設立し、同年 5 月に彼が最高責任者として仲間に加わりました。彼がこれまでにボール ウォッチで手掛けた代表的なトピックは下記の通りです。是非、今後の彼(=ボール ウォッチ)の活躍とさまざまなイノベーションにご期待ください。
ボール ウォッチ初の自社ムーブメント (2018年)
ボール ウォッチ初の自社ムーブメントである<RR7309-C>は、将来的なメンテナンスを考慮し、部品の流通が安定しているETA2824-2のムーブメントをベースにし、地板、香箱、ゼンマイのサイズアップと輪列受けの位置などを独自に設計したことにより約80時間のロングパワーリザーブを実現しました。毎時28,800振動のハイビートムーブメントは、スイスC.O.S.C.クロノメーター認定を受けた高精度ムーブメント。精度の安定を図るため、14型サイズのムーブメントに合わせた大型のローターを取り付けることで、ゼンマイの巻上効率を向上させています。
特許取得済の「スプリングシール」 (2018年)
緩急針はテンプ受け部に設置され、+または-に針を動かすことでヒゲゼンマイの長さを調整し、時計の遅れ進みを調節する機構です。しかし、時計に衝撃などがくわわった時にこの緩急針が動いてしまい、時計の精度に悪影響を及ぼすことがあります。この「スプリングシール」は、特殊なプレート(※白色に光っている部品)で緩急針の動きを固定し、外的ダメージによる緩急針のズレを防ぎます。緩急針の調整を施すときは、2本のビスを緩めてプレートを外す必要があります。
短針が単独可動するRR1204-C (2021年)
短針が単独可動する革新的なモジュールをリーズナブルなコストで実現。短針の調整方法は利便性に優れるもので、ケース左サイドに配された2つのプッシュボタン(10時位置ボタンで1時間進み、8時位置ボタンで1時間戻る)でおこないます。この機構によって、海外に降り立った時などにリューズの操作をせずに直ちに現地のローカルタイムに時刻を合わせることが出来ます。また各プッシュボタンはわずかに回転(1クリック=60°/6クリックで1回転)することで、ロックとアンロックが交互に入れ替わる仕組みになっており、誤って押してしまうことを防ぐほか、防水・防塵の観点からも安心の設計といえます。